この記事には「ドラゴンクエストビルダーズ」のネタバレが含まれます。
かつてメルキドは滅亡し、魔物の繁栄を許しました。
徐々に復興していくメルキドのまわりには今、かつて猛威を揮った魔物たちの亡骸が転がっています。
生きるということは、けっしてきれいごとではありません。

小さな遺跡
町の南西にはちょっとした丘があり、そこには砂漠地帯から移築してきた小さな遺跡があります。
遺跡といっても、別段古いものではありません。砂漠を探索する際に仮の拠点が欲しくなったビルダーが、現地調達したレンガなどで作ったものです。

中には記名のない墓
扉が撤去され部屋としての機能を果たさないこの遺跡の中には、墓が2つ並んでいるだけ。
特に歴史的価値も資材価値もない遺跡をわざわざ移築し、その中に墓を建てたビルダーの真意を知る者はいません。
心優しいはじめてのともだちである少女も、偉そうな態度の裏で誰より心配してくれていた壮年の男も、何も語らないビルダーから無理に聞き出そうとはしなかったからです。

宝物庫
夜が更けるのを待って、町へ戻りましょう。
人気のない路地を通り、無防備に開け放たれた宝物庫へと入ります。
奥に堂々と鎮座する大倉庫は、そうそう動かせるものではありません。
だからこそ、その下は格好の隠し場所といえました。

大倉庫の下にある地下への穴
この通り、大倉庫を除くとそこには小さな穴が空いています。
かろうじて人が一人入れるくらいの小さな穴ですが、底が見えないほど奥深く、地下に向かってまっすぐに掘られています。
粗末な木の梯子を踏み外せば、全身が硬い岩盤に叩きつけられることでしょう。

ただ掘っただけの地下道
慎重に梯子を下りて底へと辿り着くと、脆い土壁がむき出しになった細い地下道が南西方向に伸びています。
そう、あの遺跡のあった方角です。

前方に扉
地下道を進んでいくと、道が少し開けると同時に扉が見えてきます。
この扉の先にあるものこそが、あの遺跡に建てられたお墓が弔うものです。

遺跡の地下にあるひみつの祭壇
――メルキドは今、花と緑に溢れる豊かな町になりました。
けれど、そこに至るまでの道のりはけっして容易くはなかったのです。
度重なる魔物の襲撃により荒らされた土は、緑を宿す力を失ってしまった。
徐々に復興していく街、死んだまま芽吹くことがない大地。
モノをつくる力では、自然を生み出すことは出来なかった。
それでも、草花の香りが溢れる好風をあきらめようとは思いませんでした。

ドラキーが持つ「草原のたね」
ものを作るための手で剣を握り、町の東に広がる森でひたすらにドラキーを狩りました。
人の手では生み出せない、草原を作る力を得るためです。
彼らが落とす「草原のたね」は、死んでしまった土を緑が芽吹く豊かな土壌へと蘇らせる効果がありました。
草原のたねにより蘇った大地には、「ももいろのつぼみ」も植えました。これもドラキーの亡骸から手に入るものでした。

スライムベスが持つ「きいろのつぼみ」
砂漠地帯では幾匹ものスライムベスがすりつぶされました。
彼らが持つ「きいろのつぼみ」は町の周りにはない色の花を咲かせる貴重なものだったのです。

スライムが持つ「しろいつぼみ」
多くの花で町を彩りたいという欲は、多くのスライムを屠りました。
彼らのもつ「白いつぼみ」のために、数えきれないくらいの油が流れました。

3色のつぼみと、草原のたねと、油。
土は芽吹き、花は町の周囲を彩りました。その後には、ドラキーの血とスライムの油が残されました。
未来を生きようとしているあの町の人々の目に触れさせたくないという欲が、この地下の石室を作りました。
魔物だから、敵だからと、誰かに許されたくなどありませんでした。
むせ返るような殺戮の残滓が残るこの部屋にいると聞こえてきます。
遥か地上を跳ね回る、無邪気なスライムたちの足音が。
――わたしのこの懺悔が、いつか意味のあるものになる日が来ますように。
ビルダー・とよこ